TOP > 建設業界最新ニュース > 建設職人基本法で建設業界はどう変わる?

建設職人基本法で建設業界はどう変わる?

image1

2017年3月、建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(建設職人基本法)が施行されました。

 

この法律には建設業界を大きく変える可能性があり、そのためBALENAVIでも2回取り上げました。

 

人手不足の解決につながる職人基本法って何のこと?

「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」について

 

これまで取り上げた段階では、建設職人基本法について具体的内容は決められておらず、抽象的な『概要』しか決められていませんでした。

 

しかし、2017年6月、ついに基本計画が策定されました。いよいよ建設職人基本法のエンジンにキーが挿し込まれた状態と言ってもよいでしょう。建設職人基本法の動向を、気にされている建設業界の方も多いことでしょう。

 

そこで今回は、A4・23ページにわたってびっしりと書かれている建設職人基本法の基本計画を解説します。時間が無くて、チェックが遅くなってしまった方でも、今ならまだ間に合います。本格的に建設職人基本法が動き始める前に、必読です。

 

建設職人基本法の方針

image2

建設職人基本法は、4つの柱でその方向性が決められています。

 

①適正な請負代金の額、工期等の設定

②設計、施工等の各段階における措置

③建設業者等及び建設工事従事者の安全及び健康に関する意識の向上

④建設工事従事者の処遇の改善及び地位の向上

 

この4つの方向性は、2016年12月に法律制定された段階から決められていたものです。そのため、今後も国会を通すことなく変わる確率は低いと言えます。

 

本文には色々と書かれていますが、ここでは詳細な解説は割愛しますが、4つの方向性を見出しだけでも頭に入れておくことは損ではないでしょう。なぜなら、これから建設職人基本法が動き出した後、方針に照らし合わせて「これってオカシいんじゃない?」と皆さんが感じたときにアクションをとる土台になり得るからです。

 

政府が総合的かつ計画的に講じるとされる施策

image3

建設職人基本法の基本計画では、5つの施策で、方針で抽象的に示された事柄を実現していくとしています。

 

①建設工事の請負契約における経費の適切かつ明確な積算等

②責任体制の明確化

③建設工事の現場における措置の統一的な実施

④建設工事の現場の安全性の点検等

⑤建設工事従事者の安全及び健康に関する意識の啓発

 

建設職人基本法のこれらの施策は、今後、主に各自治体で具体化されていく予定ですので、今後の動きを考えるうえで、理解することが重要です。

 

それぞれの施策について解説します。

 

①建設工事の請負契約における経費の適切かつ明確な積算等

この施策は、「積算」と「工期」の設定に分かれています。

 

「積算」については、建設現場はそれぞれに異なる事情があることから、“今後、実効性のある施策を検討”としています。元請を担当する建設企業にとっては、見積もりに関わる重要な施策です。今後の動向に要注目です。特に、“立ち入り検査”についても触れられているので、厳しい施策となることが想定されます。

 

「工期」については、最近話題になることが増えた建設現場の“週休2日”などについても触れられています。これを実現するために、“計画的な発注”が明言されており、『公共事業といえば年度末』といったことは無くなっていくことが見込まれます。

 

②責任体制の明確化

ここでも“立ち入り検査”で実質的に、責任体制が明確化されているかを確認することが明言されています。特に、“一括下請負”(いわゆる丸投げ)の禁止や“専任技術者の配置”は、建設会社の在り方を変える一石になり得ます。

 

③建設工事の現場における措置の統一的な実施

この施策のキーワードは、「連携」と「一人親方」です。

 

建設業界では、元請から下請へと企業横断的につながって業務を行うため、法律の実現には「連携」が欠かせません。「責任体制の明確化」と関わってくることですが、この施策によって責任の押し付け合いは無くなる方向になるでしょう。

 

一方、これまで「一人親方」は『自営業者』であるため『労働者』とは区別され、労働安全衛生法の保護の対象ではありませんでした。しかし、それでは“統一的な実施”ができず、建設職人基本法の方針を実現できないことから、「一人親方」についての施策も行うことが明言されています。特にこれまで任意とされていた「一人親方の労災保険の特別加入制度」については加入促進を徹底していくとあります。このことについては、建設職人基本法が「一人親方」の保護をきっかけに議論され始めたことから、「一人親方」にとってのメリットが講じられることが予測されます。

 

④建設工事の現場の安全性の点検等

この施策については、「徹底」や「義務化」といった文言が見当たらず、一方で「促進」「推進」という言葉が目立ちます。

 

このことから、建設現場からの排除につながるような厳しい措置は行われないかもしれませんが、安全点検に取り組む建設会社にとってメリットとなる政策実施が期待されます。

 

⑤建設工事従事者の安全及び健康に関する意識の啓発

この施策は、人材育成に負荷を感じている建設会社にとって恩恵になり得ます。

 

なぜなら、“安全衛生管理の教育支援”や、“健康相談窓口”の活用促進について触れられているからです。自社の規模的に、人材育成に手が回らない企業にとっては、有難いのではないでしょうか。

 

施策推進の必要事項

image4

「必要事項」と言っているからには、政府の「必ずやるぞ」という意気込みを感じるとても重要な個所です。

 

①社会保険加入の徹底

②建設キャリアアップシステムの活用推進

③「働き方改革」の推進

④労働安全衛生法の遵守徹底

⑤墜落・転落災害防止対策の充実強化

⑥2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた先進的取組

⑦関係者における連携、協力体制の強化

 

必要事項には、政府にとっての目標管理項目(いわゆるKPI)に似たものもありますが、上記7項目が建設現場の当事者に関係してきそうです。

 

①社会保険加入の徹底

2014年から建設現場の社会保険加入の徹底に政府は取り組んできました。結果として、加入率は大きく上昇したものの、“法定福利費を確保できない”という中小の建設企業の声がありました。そこで“法定福利費を内訳明示した見積書”の活用が、今後は推進されていくことが明言されています。

 

②建設キャリアアップシステムの活用推進

特に、重要になると考えられるのが、建設業界の就職実績について“業界統一ルール”を設けるとしていることです。これによって、建設現場で働こうとする人材にとっては、キャリアアップの道を描けるので、建設業界の人材確保に貢献し得るものだといえます。

 

一方で、“業界統一ルール”は、人材が建設業界を渡り歩くパスポートを得ることになるので、建設会社にとっては優秀な人材の引き留め策が必要となることでしょう。

 

③「働き方改革」の推進

日本企業での働き方については、昨年より活発に「働き方改革」に関する議論がなされてきました。しかし、特有の事情から、建設業界については「猶予」が設けられているのが一般的でした。この「猶予」についても踏み込んでいくことについて触れられています。

 

④労働安全衛生法の遵守徹底および

建設現場では“違反が認められる状況”が多く見受けられる現状を、問題視しています。特に、“足場からの墜落・転落”については、特記しています。

 

⑤墜落・転落災害防止対策の充実強化

前の項目でも触れましたが、「足場からの墜落・転落」について、“速やかに実効性のある対策を講じる”とあります。建設業界の足場については、既に資格をもたない関係者の排除などが行われています。さらに厳しい実施が行われることになりそです。

 

⑥2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた先進的取組

この事項は、建設業界の魅力に関わることだとしています。専用の協議会まで設けることから、緊急性は低いながらも、国を挙げての顕彰などが行われるのではないでしょうか。

 

⑦関係者における連携、協力体制の強化

施策の箇所でも触れましたが、建設業界での法律実施では「連携」が大切です。ここでは、“集中的な広報、合同パトロールの実施”が述べられており、「声掛け」だけに終わらない本格的な動きが考えられます。

 

建設業界の生産性を上げるために

image5

建設職人基本法は、どちらかというと、「何か起きたらどうする?」といった建設会社にとっての重荷となる事柄に触れています。

 

しかし、建設職人基本法で述べられていることは、これからの人口減少時代に日本の建設会社が維持・発展するうえで欠かせない生産性向上にとって、欠かせないことばかりです。

 

建設BALENA・リフォームBALENAも、ITの分野から建設現場の生産性向上に向けて、これからも改善を続けていきたいと思います。

2017年8月20日投稿